予特討論 ■平成20(2008)年3月26日

予特討論 増子博樹 平成20年第1回定例会 予算特別委員会 討論 平成20(2008)年3月26日

*本文は口述筆記ではありませんので、表現その他に若干の変更があることがあります。

私は、都議会民主党を代表して、本委員会に付託された、新銀行東京に400億円の追加出資を求める第131号議案「平成20年度東京都一般会計補正予算(第1号)」について反対、その他の議案には賛成の立場から討論を行います。

まず、第1号議案「平成20年度東京都一般会計予算案」について申し上げます。
本予算案は、過去最高額である堅調な都税収入を受け、前年度比3.8%増、6兆8,560億円の規模となりましたが、政策的経費である一般歳出は1.8%増の4兆4,137億円にとどまっています。
 原油価格の高騰や米国経済の先行き不透明感による日本経済への影響、平成21、22年度、合わせて6,000億円を超えると予測される地方法人特別税制度による大きな減収、オリンピック招致や8,000億円を超える社会資本更新経費といった東京の将来需要などに配慮しつつ、「都民生活が直面する課題に適切に対応」する予算編成とされています。こうした予算編成については一定の評価をするものですが、一方では、長期にわたった緊縮予算への慣れや内部努力に伴う定数削減、職員のモラールの低下による企画力や執行力の低下が懸念されます。
 また、私たちが以前から求めてきた、本当に「震災に強い東京」を目指す震災対策の促進や自立支援策である「低所得者生活安定化プログラム」の充実、小児科医をはじめとする医師不足対策などの取り組みは十分とはいえず、「現代の貧困」についての調査や社会で生きる力を付けるメディアリテラシー教育への取り組みなども見過ごされています。
 引き続き、社会経済状況が変化する中でも、都政に求められる課題や都民ニーズに積極的に対応されるよう求めるものです。
次に、予算の各分野について申し上げます。
まず、震災対策についてです。
 昨年度に創設された木造戸建て住宅の耐震診断・耐震改修の実績は、耐震診断が予算800件に対して551件、耐震改修は予算480件に対してわずかに22件でした。事業の立ち上げ初年度ということ、耐震診断・耐震改修の助成制度を持たない区があったことを考えれば、この低い利用実績もやむを得ない面があったことは事実です。
 今年度も、予算ベースでは耐震診断1,500件、耐震改修500件の目標に対し、9月末までの半年間の利用実績は耐震診断349件、耐震改修は31件にとどまっています。
 20年度予算では、今年度と同規模の耐震診断1,500件、耐震改修500件が予算措置されており、再来年度以降は更なるスピードアップも計画されていますが、民主党がこれまで何度も指摘してきた通り、このままのペースでは、平成27年度までに住宅の耐震化率を90%以上とする目標の達成は、極めて困難です。
 特に耐震改修に対する助成制度の一層の利用を促進するため、耐震改修を受けた結果、耐震基準を満たさない住宅がどの程度あり、それらの住宅の所有者がなぜ耐震改修に踏み切れないのかを把握し、分析した上で、対象の拡大や助成限度額の引き上げなど、都独自の助成制度として抜本的、かつ効果的な改善に努めていくことを強く求めておきます。
 また、来年度からは新たにマンションの耐震改修費用に対する助成が始められますが、木造戸建て住宅の耐震化に対する取り組みと同様に、制度の改善に努めながら事業を進めていくことを求めます。
次に医療・福祉について申し上げます。
昨年は、次々と起きた介護保険に関連した事件から、介護人材の不足、介護事業者の低い採算性、介護従事者の低い報酬など、東京における問題点が鮮明になった年でした。こうした中で迎える平成20年度の緊急の取り組み、未曾有の高齢社会における生活の安心・安定につなげる中期的な取り組み、いずれにおいても、まだまだ先が長いと言わざるを得ません。
 全国最下位である介護保険施設の整備、低い報酬にあえぐ自立支援法の事業者、どちらも、安定した運営の見通しが立たなければ、新規参入者は増えません。また、地価などの物件費とともに、人件費も高い東京では、既存法人も新たな事業展開をする体力が弱いことが課題です。地域生活基盤の整備促進、介護従事者の適切な給与水準確保に、必要な対策を求めるものです。
 病院勤務医師の激務緩和、負担軽減は、待ったなしの状況です。総括質疑でも求めた救急医療についての詳細な調査、そして多摩で起きた2つの残念な事例の背景についての詳しい調査を、早急に行うよう求めます。
 さらに、民主党が提案しました、医療クラーク、トリアージの導入、そしてこれにあわせたプライマリケアの提供について、しっかりとした取り組みを求めておきます。
 特に子どもについては、救急患者の0.6%は重症であると言われています。一部の非常識な例は別として、素人の親に病院に行く行かないという判断を求めるよりは、手遅れにさせないために、診察できる体制の整備を考えていただきたいと強く申し上げておきます。

 最後に、食品の原産地表示について申し上げます。膨大な消費量を占める都で義務化されれば、都内向けだけを別に生産することも現実的でないため、全国に大きな影響を与えます。当然コスト増につながりますので、安い食品を必要とする東京の消費者、疲弊した経済に苦しむ地方の消費者に与える影響についても、十分考慮する必要があります。
 安全のために必要なことは実施すべきですし、食品衛生法では、輸入業者の営業停止・禁止処分もできますから、危険な食品を流通させないためには、こうした処分を躊躇せずおこなう必要もあります。
 しかし、安心のためには高いコストを厭わない消費者もいることは事実ですが、行政としては、安全と安心を区別し、高い安心料を負担する気も、負担能力もない消費者がたくさんいることに、常に注意を払わなくてはなりません。発生するメリットとデメリットを明確にして、一般都民に知らせ、その上で幅広い議論をすべきです。
 さらに、加工食品原料の原産地表示まで義務化している国はなく、安易に義務化すれば、非関税障壁ととらえられる可能性もあります。
 このように、法令で義務として課すべき事柄かどうか、食品の生産・加工・流通過程、多様な消費者のニーズ、そして諸外国との関係といった客観的事情を幅広く冷静に吟味し、故意の混入や特殊な事故への対策と、関係者の努力で回避できる事態を区別して考えるべきであると、申し上げておきます。

次に、第20号議案「平成20年度中央卸売市場会計予算案」について申し上げます。
豊洲新市場の整備に関しては、常任委員会において詳しく取り上げてきましたが、この間行われている施設計画の見直しが、と売買参加者に有利に働いているといった声がの人たちなどから多く聞かれます。しかも、この間、猪瀬副知事が「お寿司屋さんはイオンに行ってネタを買えばいい」とその存在意義を否定するかのような発言をしていることが、の人たちの不信感をますます深める結果となっています。
 私は、築地市場の移転問題については、東京都が責任をもって、関係者に対して、誠意ある説明を行い、理解を得るとともに、土壌汚染問題の解決や関係者の理解がないまま、築地市場の強引な移転を行わないことを強く要望しておきます。
 また、豊洲新市場の用地取得については、少なくとも土壌汚染対策法と同等以上の調査を実施した上で、万全な対策を講じていくことを求めるものです。
最後に、第131号議案「平成20年度一般会計補正予算案」について申し上げます。
私たち都議会民主党は、新銀行東京への400億円の追加出資について、まず結論ありきではなく、本会議や予算特別委員会、各常任委員会において、この間、真摯に議論を積み重ねてきました。
 しかしながら、まで、石原知事並びに関係局長、さらには、新銀行東京からは、追加出資に賛成しうる納得のできる答弁が得られたとは言えません。よって、私たち都議会民主党は、都民からの信託をうけている責任政党として、新銀行東京への追加出資については、反対という結論に至りました。
 そもそも、新銀行東京は、石原知事のトップダウンで作られた銀行です。このことは、石原知事がいくら否定しようが、多くの都民・マスコミが「石原銀行」と認識していることに象徴されるように、否定しがたい事実です。
 石原知事は、旧経営陣に責任を転嫁し、発案当時のマスタープランが過大であったことやスコアリングモデルをはじめとしたビジネスモデルが破綻したことの責任についても、一切認めようとはしませんでした。また、旧経営陣の任命責任をはじめ、金融情勢全般の判断を見誤った責任や経営の悪化に対して迅速に対策を講じてこなかった責任など、その責任を十分に自覚してきたかどうかについても、明確にお答えいただけませんでした。
 石原知事は、「新銀行の経営が行き詰まった場合、既存融資先1万3千社を初め、その取引先、従業員、家族などの関係者に重大な影響を及ぼしかねない」と盛んに強調していますが、同じ理由で、他の金融機関から出資を求められたら、それに応じるのかという私たちの質問には、NOと明確に答弁してます。したがって、石原知事のいうところの「既存融資先1万3千社を初め、その取引先、従業員、家族」というのは、全くの詭弁であり、結局は、自分がつくった銀行だけに税金をつぎ込むという、まさに、石原知事のメンツのためだけの追加出資と言わざるを得ません。
 また、再建計画で想定している、健全ご返済先9,000社が、引き続き新銀行東京の取引先となり得るのかの確証もないなかで、新銀行マスタープランで定めていた、融資メニューごと年度ごとの融資件数と金額の目標が明らかにされないようであっては、再建計画がうまくいっているのかさえ検証することができません。
 確かに、原油高の影響などによる製造コストの上昇や株安をはじめとする消費者心理の低迷などにより、中小企業を取り巻く状況は、今後、ますます厳しくなることが予想されます。
 しかし、すでに死に体同然の新銀行東京が、今後、これらの中小企業の期待にどれほど応えられるのかは極めて疑問です。
 私たちは、都民に一番負担の少ない形で、新銀行から撤退する方法を早急に検討すべきだと主張してきましたが、日銀考査の結果や金融庁の検査を踏まえ、東京都や新銀行東京が本気になって受け皿機関を模索することなどが求められています。
 また、新銀行東京に400億円を投入するよりは、例えば、年間15万件、2兆円の保証承諾を行っている制度融資のなかで工夫を凝らし、赤字企業や債務務超過企業への資金供給をさらに充実させていくとともに、金融機関の中小企業への貢献度などを評価し、公開する金融アセスメント制度などを進めていくことの方が、より効果的であると考えています。
最後に、都議会自由民主党及び都議会公明党が提案している付帯決議案について申し上げます。
私たちは、平成15年12月9日の都議会本会議において、石原知事自らが「税を再び投入することは考えていないし、その可能性はない」と答弁していたにも関わらず、この約束がすでに反故にされたこと。また、平成16年3月30日に都議会本会議で付された付帯決議「都においても、新銀行の目的を達成するため、経営全般にわたり適切な監視に努めること」などといった約束が、十分に果たされてこなかったことを踏まえれば、自公提案の付帯決議の内容は極めて不十分であり、賛同しがたいことを申し上げて、私たちの討論を終わります。
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